虚血性心疾患・弁膜症
医師・医学生の方へ
To Doctors & Medical Students
カテーテル(冠動脈・弁膜症・心筋症)
当院では冠動脈疾患、弁膜症、心筋症に対してカテーテル検査並びにカテーテル治療を行っています。
冠動脈疾患(虚血性心疾患)
心臓カテーテル検査を可能な限り、患者さんへの侵襲の少ない橈骨動脈から行っています。平成29年の心臓カテーテル検査の総数は1,532件、冠動脈インターベンション(PCI)数は500件でした。
経皮的冠インターベンション(PCI)件数

急性冠症候群(ACS)症例に対するPCIも年々増加し、平成29年は188件でした。
緊急PCI例のうち、急性心筋梗塞は125件、不安定狭心症が70件でした。
急性冠症候群(ACS)に対する緊急インターベンション数

当院の特徴
血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)を積極的に用いた、質の高い治療を心がけています。

また、通常の治療が困難な高度石灰化病変に対してはロータブレーターを、血栓性病変に対してエキシマーレーザーを、左前下行枝近位部の分岐部病変に対してはDCAを用いるなど、病変に応じた治療選択の幅が広いことも特徴です。
ロータブレーター(rotational atherectomy)

エキシマーレーザー(ELCA)

安定狭心症に対しては、虚血の有無を事前に負荷心電図や負荷心筋シンチで評価した上で治療適応を判断したうえで治療を行っています。判断に迷う場合にはカテーテル検査時にFFRによる虚血の評価を行うようにしています。
当院は平成29年に更新した心臓専用のカテーテル装置を2台有しております。基本性能の向上に伴い、被ばく量の低減を実現しています。また、dynamic coronary roadmapやlive stent boostといった最新の機能を活用して治療成績の向上につなげています。
血管造影装置の新機能

弁膜症
弁膜症に対するカテーテル治療として、以下の治療を行っています。
僧帽弁狭窄症
リウマチ性僧帽弁狭窄症に対する経静脈経カテーテル的僧帽弁交連裂開術(PTMC) を行っています。
適応は自覚症状のある中等症以上(僧帽弁口面積<1.5cm2, 平均圧較差>5mmHg, 肺動脈収縮期圧>30mmHg)のリウマチ性僧帽弁狭窄症で、形態がPTMCにむいている場合です。左心房内に血栓がある、重症僧帽弁逆流を合併している場合には行うことはできません。

大動脈弁狭窄症
1. バルーン大動脈弁拡張術(BAVまたはPTAV)
外科的大動脈弁置換術(AVR)、もしくは経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が不可能な例に対する治療、またはAVRやTAVIまでのブリッジとして行っています。
2. 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)
2018年4月からAVR不可能例や施行困難例に対してTAVIを開始しました。
TAVIの適応
自覚症状(心不全、胸痛、失神)のある重症大動脈弁狭窄症で以下のような方。- ・外科的大動脈弁置換術が不可能
- ・外科的大動脈弁置換術のリスクが高い患者さん
- たとえば、過去に冠動脈バイパス手術を受けている、高齢である(おおむね80歳以上)
虚弱である、肝硬変、重症肺疾患など開心術のリスクが高い患者さんなど。
- ・余命1年未満
- ・透析患者(保険適応外)
- ・感染性心内膜炎
- ・外科的大動脈弁置換術のリスクは低いが、本人がTAVIを希望する場合
- ・重度の認知症
- ・弁輪サイズが小さすぎる、大きすぎる(使用可能な人工弁のサイズに限りがあるため)
TAVIの手順
TAVIには大腿動脈からカテーテルを挿入して行う、大腿アプローチと、心尖部からカテーテルを挿入する心尖部アプローチがあります。
経大腿アプローチによるTAVIの手順
- 1. 大腿動脈から大動脈内を逆行性にカテーテルを進め、ガイドワイヤーを大動脈弁から左心室に通過させる
- 2. バルーンを拡張させて人工弁を留置する
- 3. バルーンを抜去するとすぐに人工弁が機能します

TAVIで用いる人工弁(Sapien3)と留置後の状態

経大腿アプローチによるTAVI(動画)
心筋症に対するカテーテル検査と治療
心筋症に対しては診断目的で、冠動脈造影、心筋生検を行っています。肥大型閉塞性心筋症(HOCM)に対する、カテーテル治療として、経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)を行っています。
- 参考資料
- 1. 大倉宏之編著:チャートでわかる実践IVUS,OCT & FFR(南江堂/2009年)
- 2. 大倉宏之、吉田清編著:
SHDインターベンション治療のための心エコー図マニュアル(メジカルビュー社/2014年) - 3. 吉田清、木村和美、大倉宏之編:
心エコー・神経超音波で診る脳梗塞診断マニュアル(南江堂/2013年)